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シマノ ディスクブレーキ トルク

【保存版】シマノディスクブレーキトルク一覧|公式値で音鳴り解消&カーボン破損ゼロへ

この記事を読んでわかること
  • シマノ公式マニュアル(DM・SI)に基づく、キャリパー・ローター・ホース周辺の正確な締め付けトルク値
  • 音鳴りやセンター出しの失敗を防ぐ、トルクレンチを使った実践的なメンテナンス手順
  • カーボンフレームを「オーバートルク」で破壊しないための注意点と、ねじ止め剤・グリスの正しい使い分け
  • SRAM・カンパニョーロとのトルク値の違い、およびTOPEAKなどトルクレンチの選び方の考え方

はじめに:金属音に怯える週末から、「カチッ」と笑える週末へ

静かな峠道を登っているとき、本来なら風切り音だけが耳に届くはずなのに、ホイールのあたりから微妙な金属音が混じることがあります。

ブレーキをかけるたびに「キィー!」という高い悲鳴のような音が鳴り、自分の操作が間違っているのではないかと不安が胸のあたりにじわっと広がる瞬間は、多くのサイクリストが経験しています。

「そろそろ自分で直したい。でも、カーボンフレームが割れたらどうしよう……」。
六角レンチを握った手が、その不安のところで止まってしまうのも自然な反応です。

頭の片隅には、SNSで見た「ねじ切れたキャリパーボルト」や「引きちぎられたカーボン台座」の画像がこびりついていて、「自分も同じ失敗をするのでは?」という恐怖が消えません。

とくに、あなたの愛車がシマノ105・アルテグラ・デュラエースの油圧ディスクブレーキ+カーボンフレームであれば、その不安は決して大げさではありません。

現代のロードバイクは、人間の「勘」や「手ルク」だけで整備するには、あまりに精密で高性能な機構になりました。ほんのわずかな締めすぎ・緩みが、フレーム破損やブレーキトラブルにつながり得る世界です。

しかし、正しい「数値」と「手順」を知っていれば状況は一変します。
30年以上の経験から断言できるのは、「トルク管理さえ押さえれば、整備は恐怖ではなく『愛車との対話』になる」ということです。

この記事は、単なるトルク表ではありません。

シマノ公式マニュアルと各種技術資料、そして現場での実体験をもとに、「キャリパー」「ローター」「アダプター」「油圧ホース」など主要部位のトルク値を一覧化しつつ、音鳴りを断ち切るセンター出しの手順、やってはいけないNG行為まで、ストーリー仕立てで解説していきます。

週末のロングライドを、不安ではなく期待でスタートするために。
まずは「正しいトルク」という目に見える基準を、あなたのツールボックスに加えていきましょう。

もくじ

【結論】迷いと決別する「数値」|シマノ ディスクブレーキ締め付けトルク一覧表

不安を断ち切る6〜8 N·m|フラットマウントキャリパー固定ボルト&アダプター

最初に押さえるべきなのは、「フラットマウントキャリパーとアダプターを、どのくらいの力で締めるか」です。

ここを曖昧なまま「なんとなく」締めると、音鳴りもフレーム破損も同時に招きます。
シマノはディーラーマニュアル(DM-TORQUE-00/01-ENG など)で、各部の推奨トルク値を明確に示しており、ロード用フラットマウントキャリパー(BR-R7070/R8070 等)では、代表的な値は次のようになります。

【フラットマウント 規定トルク一覧(代表例)】

部位対象ボルト規定トルク (N·m)備考
キャリパー固定フラットマウントキャリパー固定ボルト6–8フレームを貫通してキャリパーを固定
アダプター固定マウントアダプター固定ボルト6–8アダプターをフレームに固定するボルト

シマノの表を見ただけだと、「6〜8 N·mなら、上限の8 N·mでガッチリ締めた方が安心そうだ」と思ってしまいがちです。しかし、ここが最初の落とし穴です。

6〜8 N·mという数字は、キャリパー本体とボルトが安全に耐えられる範囲を示したものであり、かならずしもフレーム側の許容範囲とは一致しません。

カーボンフレームの技術資料を確認すると、「Max 6 N·m」どころか「5 N·m以下」を指定しているモデルも珍しくないからです。

そのため、実務上の計算式はとてもシンプルです。

  • シマノ指定トルク:6–8 N·m
  • フレームメーカー指定:例)最大 5.0 N·m
  • 実際に採用すべきトルク:より低い方(この場合 5.0 N·m 以下)

この「The Lower of the Two Rule(弱い方を守る)」を徹底することが、カーボンフレームを長く安全に使うための絶対ルールです。「部品の上限値」ではなく、「フレームの上限値」を優先する、と覚えておきましょう。

世代で変わる「感覚」|ポストマウントのトルク値と旧MTB系の断層

現在のロードバイクではフラットマウントが主流ですが、グラベルバイクや旧型ロード、MTBでは、いまもポストマウントが現役です。
見た目が似ているため、「フラットマウントもポストマウントも、どうせ同じくらいで締めればいいだろう」と思い込んでしまう人もいますが、ここにも大きな罠があります。

代表的なポストマウントのレンジは、元のマニュアルどおり、

  • フロントキャリパー:6–10 N·m
  • リアキャリパー:6–8 N·m

とされています。ただし、これは旧世代のMTBモデルまで含めた「かなり広いレンジの代表値」です。実際のところ、シマノの技術資料を時系列に追うと、次のような「世代間の断層」が見えてきます。

  • 旧世代 XTR/XT(BR-M9000 系など):キャリパー固定 8–10 N·m
  • 現行の軽量モデル:6–8 N·m にだんだん統一されつつある

つまり、「昔の感覚で10 N·m近くまで締める」と、今の軽量キャリパーやカーボンフレームでは、あっという間にオーバートルクに達してしまう危険性があるのです。

結論として、ポストマウントを触るときは必ず「キャリパーの型番 → 該当ディーラーマニュアル(DM)」を確認するクセをつけてください。

「昔のXTRは強めに締めてたよ」という記憶は、その世代の部品には正しかったとしても、最新モデルにはそのまま当てはまりません。

40 N·mの迫力|ディスクローター(センターロック/6ボルト)の固定トルクと工具選び

次に、音鳴りや制動力に直結するディスクローターのトルクです。ローターの固定方法は大きく「センターロック」と「6ボルト(IS)」の2種類があり、それぞれ指定トルクも必要な工具もまったく異なります。

【ディスクローター 規定トルク一覧(代表例)】

固定方式規定トルク (N·m)必要な工具の例
センターロック40(40–50 指定もあり)TL-LR15+モンキーレンチ、または TL-FC36 等
6ボルト(IS)2–4T25トルクスビット+トルクレンチ

センターロックの「40 N·m」という値は、カセットロックリングと同等か、それ以上の強力なトルクです。
素手で「なんとなく」締められるレベルではなく、長いアームの工具+トルクレンチが事実上必須だと考えてください。

ロックリングの形状によっては、スプロケット工具と共用できる場合もありますが、「専用工具を使って規定値近くまでしっかり締める」ことが、ローターのガタつきや異音を防ぐ最初のステップになります。

一方、6ボルト式の2–4 N·mは、センターロックと比べるとかなり小さなトルクです。
ここでありがちな失敗が、「40 N·mの感覚」を引きずったまま6ボルトを締めてしまうことです。小さなトルクで十分な理由は、ボルトの本数が多いことと、ローター自体が比較的薄く、締めすぎると簡単に歪んでしまうためです。

実務的には、次のように使い分けると安全です。

  • センターロック:ロックリングをトルクレンチで40 N·m付近まで「ガチッ」と締める
  • 6ボルト:T25のビットで「カチッ」と2–4 N·mを狙い、対角線順で均等に締める

どちらも、「手ルクで不安だからもう少し…」と回しすぎないことが肝心です。

ミリ単位の世界|油圧ホース・バンジョー・ブリードニップルの「場所別」繊細なトルク管理

最後に、油圧ホースまわりのトルクを整理しておきましょう。
ここは値そのものが小さいうえに、位置によって役割が違うため、「なんとなく同じくらいで締める」と一気にトラブルの温床になります。

代表的なイメージは以下の通りです。

1
ブリードニップル(4–6 N·m)
  • ステムボルトと同程度のトルク帯で、「ちゃんと工具を使う」レベルです。
  • 「指で止まったところから、工具でほんの少しだけ」だと弱すぎて、オイル滲みの原因になります。
  • 実際の感覚としては、手首のスナップだけで「クッ」と締める程度(腕全体でねじ伏せない)をイメージしてください。
2
ブリードスクリュー(0.3–0.5 N·m/0.5–0.7 N·m クラス)
  • こちらは極端に弱いトルクで、一般的なトルクレンチではほとんど反応しないレベルです。
  • 元原稿にあった「指で止まったところから、工具で1/8回転前後だけ」という目安は、このブリードスクリュー側に適用すべき感覚として整理すると理解しやすくなります。
3
安全面で見落とされがちなポイント
  • パッドアクスル(ブレーキパッドを固定するピン)のような、極端に細いボルト
  • バンジョーボルトの「旧世代は8 N·m、新世代は4 N·m」といった世代間の仕様差

これらは、「太いボルト=強く締めていい」「昔も今も同じ感覚でOK」という思い込みがもっとも危険な場所です。

油圧まわりを触るときは、

  1. ホースの取り回しや向きを決める
  2. 指定トルクを必ずマニュアルで確認する
  3. 低トルク帯は「繊細なトルクレンチ」か、1/8回転の目安で慎重に締める

この3ステップを守ることで、「オイル滲み」と「ねじ切れ」のどちらも防ぎやすくなります。

【警告】過信が招く崩壊|なぜ「手ルク」は危険なのか?

見えないヒビ割れ|オーバートルクが刻むカーボンのダメージ

あなたが本当に求めているのは、「強く締めること」ではなく「走行中に緩まない安心」です。それなのに、「少し強めに締めておけば大丈夫だろう」という手段の選び方をすると、その安心感を真っ先に壊してしまいます。

カーボンフレームのディスクブレーキ台座は、見た目以上にデリケートです。
指定トルクを超えて締め付けると、まず内部の積層がじわじわと潰れ、その後に目に見えるクラックとして現れます。

つまり、外から見て「まだ割れていないから大丈夫」と思っているあいだにも、内部では確実にダメージが進行しています。

よくある思い込みは、

  • 「少し強めに締めておけば安心」
  • 「一度も緩んだことがないから、この締め方で正解だ」

といった“成功体験”です。しかし、それは単に「運良く壊れていないだけ」である可能性も高く、じつはゆっくり進行する破壊の途中経過かもしれません。
高価なカーボンフレームほど、オーバートルクの代償は大きくなります。

忍び寄るアンダートルク|峠の下りでキャリパーが「もぎ取られる」恐怖

一方で、アンダートルク(締め付け不足)も同じくらい危険です。

ヤビツ峠のような長い下りで、何度も強くブレーキをかける状況を想像してみてください。あなたがレバーを握るたびに、キャリパーにはホイールを止めようとする強烈な力が加わり、その反力がボルトとフレームの接合部に集中します。

もしキャリパー固定ボルトが規定トルクに達していなければ、

  • 路面からの細かい振動
  • 急制動時の大きな荷重

によって、ボルトは少しずつ緩んでいきます。

最初は「なんとなく音鳴りが増えたかな?」というレベルでも、緩みが進めばキャリパーの位置がずれていくため、ローターと激しく擦るようになります。

最悪の場合、「ブレーキレバーを握った瞬間にキャリパーが外れ、ホイールに巻き込まれる」という事態も理論上は起こり得ます。

「壊さないように、かつ緩ませない」。
この細いレンジを確実に狙うための道具が、トルクレンチなのです。

「グリス」はNG? ブレーキボルトにねじ止め剤が必要な工学的理由

もう一つ見落とされがちなのが、「ボルトに何を塗るか」という問題です。
一般的な整備では、「とりあえずグリスを薄く塗っておくと安心」という文化があります。

しかし、ブレーキ関連のボルトに関しては、この“常識”がトラブルの原因になることも少なくありません。

グリスを塗ると、ボルトの摩擦係数が下がり、同じトルクでもボルト軸方向の引っ張り力(軸力)が大きくなります。

ある研究では、潤滑によって軸力が40%以上増加するケースも報告されており、「指定トルク通りに締めたつもりでも、実際にはオーバートルクになる」状況が起こり得ます。

ブレーキの固定ボルトで本当に欲しいのは、滑らかな回転ではなく、「適正な軸力での固定」と「緩みにくさ」です。この役割を担ってくれるのが、中強度のねじ止め剤(ロックタイト)です。

  • キャリパー固定ボルト:グリスは基本的にNG
  • ねじ止め剤:少量を正しい位置に塗布し、摩擦係数と軸力をコントロールする

このように、「黒い液体」でも役割がまったく違うことを理解しておきましょう。

ディスクブレーキ トルク不足のサイン|走行前にチェックしたいポイント

トルク不足は、走行前のちょっとしたチェックでかなりの割合を防げます。ライド前に次のようなポイントを確認してみてください。

  • キャリパーを手で軽く押したとき、わずかでもグラつきやカタつきがないか
  • ブレーキレバーを数回強く握ったあと、ローターとの擦れ音や位置ズレが生じていないか
  • ローター固定ボルトやロックリングに「手で触って分かるゆるみ」がないか

どれも特別な工具は必要なく、数分で終わる確認です。

それでも、「おかしいな」と感じたら、その日のライドを中止してでも原因を突き止めた方が、安全面でははるかにプラスになります。

【解決】静寂を取り戻す儀式|音鳴りを根絶するセンター出しとトルク管理

この章では、元原稿で示されていた手順をベースに、「なぜその順番なのか?」を補足しながら解説します。キーワードは、「位置決め」と「トルク管理」を切り離さないことです。

準備という名の近道|ボルトを緩める前の「ピストンリセット」

多くの人がやりがちな失敗は、「とりあえずキャリパーのボルトを緩めてから考える」ことです。
確かに、それでもセンター出しができる場合はありますが、実務的には遠回りになることが多いです。

まずやるべきは、ピストンを初期位置に戻す「ピストンリセット」です。
片効きや音鳴りは、ピストンの左右の出方が揃っていないことが原因のひとつです。

キャリパーをフレームに固定したまま、ピストンをいったん押し戻し、再度レバーを数回握って均等に出る状態を作っておくと、その後のセンター出しの成功率が一気に上がります。

このひと手間を挟むことで、ボルトを緩めたあとの調整幅が小さくなり、「少し動かしただけで決まる」状態に近づけることができます。

0.1 mmの攻防|隙間ゲージと「交互締め」が生む静寂

次に、キャリパーとローターの関係を「見える化」するために、隙間ゲージを使います。
ローターの左右の隙間は、わずか0.1 mmのズレでも音鳴りや片効きの原因になりますので、しっかりと調整しましょう。

そこで、薄いプラスチックシートや専用ゲージをローターの両側に挟み、キャリパーを「センターにロックした状態」にしたうえで固定していきます。

このときの締め方が重要です。一気に片側のボルトを「ギュッ」と締める、いわゆる「男締め」は卒業です。

  • 前側を少し締める
  • 後ろ側を少し締める
  • 再び前側を少し…

という具合に、「前・後・前・後」と交互にトルクをかけていくことで、キャリパーの供回り(締める方向に少し回転してしまう現象)を物理的に防ぎやすくなります。

結果として、ローターとの隙間が左右ほぼ均等に保たれ、ブレーキ時の擦れ音や片効きが大幅に減少します。

最終仕上げ|トルクレンチで「カチッ」と決める理由

位置決めがうまくいっても、最後の本締めで「手ルクに戻ってしまう」と、すべてが台無しになります。
センター出しの成否は、最終的な締め付けトルクで決まると言っても過言ではありません。

だからこそ、最終段階では必ずトルクレンチを使いましょう。
さきほどの交互締めと同じ手順で、指定トルクの下限〜中間値を狙って「カチッ」と音が鳴るまで締めていきます。ここでも、

  • 「さっきの位置決めが台無しになりそうだから、最後だけ手で微調整」
  • 「もう少し回しておいた方が安心かも」

といった誘惑を断ち切ることが大切です。数値に任せて淡々と締めることで、「毎回同じ結果が得られる」再現性の高い整備になります。

それでも直らない? 音鳴りの「トルク以外」の原因にも目を向ける

トルク管理とセンター出しを正しく行っても、音鳴りが完全には消えないケースもあります。その場合は、「トルク以外の原因」が潜んでいないかをチェックしましょう。

たとえば、

  • パッドやローターの油汚れ(クリーナーや指の皮脂が付着している)
  • パッドの片当たりや偏摩耗
  • フレーム・フォーク自体のたわみや共振

などです。

トルク管理をきちんと行っておくと、逆に「これはトルクではなく、別の要因だ」と切り分けやすくなります
原因をひとつずつ潰していくことで、最終的には「静かな一発目のブレーキング」を手に入れることができます。

【盲点】マニュアルの行間に潜む罠|よくある失敗とプロしか知らない注意点

この章では、シマノのディーラーマニュアルを正しく読めていても、その「行間」にある罠に引っかかりやすいポイントを整理します。

種類の違う「黒い液体」|グリス禁止とロックタイトの必須性

すでに触れた通り、ブレーキ周りのボルトに「とりあえずグリス」は危険です。特に、カーボンフレームや軽量キャリパーでは、潤滑によって軸力が過大になり、指定トルクの範囲内でも破損リスクが高まります。

そこで、現場のプロは次のように使い分けています。

  • 回転部分(BBやヘッドのベアリングなど):グリスで潤滑し、回転を滑らかにする
  • 固定部分(ブレーキキャリパーのボルトなど):ねじ止め剤で「緩みにくさ」を優先する

どちらも見た目は「黒い液体」ですが、目的も作用もまったく異なります。

シマノのマニュアルに「グリス塗布」と明記されていないブレーキ関連のボルトは、基本的にグリスではなく、中強度のねじ止め剤を少量のみ使用すると覚えておくと安全ですね。

世代間の断絶|バンジョーボルトの「8 N·m」と「4 N·m」の致命的違い

もう一つ危険なのが、「バンジョーボルトの世代差」です。

 旧世代のMTBコンポーネントでは、8 N·m前後の比較的高いトルクが指定されていたモデルもあります。
一方、最新の軽量モデルでは、同じように見えるボルトでも4 N·m前後まで下がっているケースがあります。

もしここで「昔のXTRと同じノリ」で締めてしまうと、最新モデルではボルトのねじ切れやシール破損が一気に現実味を帯びます。

バンジョーボルトを触るときは、

  • 「ボルトの太さ」ではなく「型番とマニュアル」を見る
  • 目安ではなく、明確な数値でトルクを指定する

という習慣を徹底してください。

SRAM・カンパニョーロとの混同|メーカーごとの「常識」を混ぜない

SRAMやカンパニョーロの油圧ディスクブレーキを使っている場合、トルク値はシマノとは異なる前提で設計されています。
たとえば、同じようなキャリパー固定ボルトでも、SRAMでは5 N·m前後が指定されているケースがあり、「シマノと同じ6–8 N·mで締める」とオーバートルクになる可能性があります。

大切なのは、「メーカーごとに設計思想が違う」という事実を認めることです。

  • シマノのキャリパー:6–8 N·mが代表値
  • SRAMの一部モデル:5 N·m前後が指定
  • カンパニョーロ:必ず専用マニュアルを確認

このように、「なんとなく同じくらいだろう」と混同するのではなく、メーカーと型番ごとにディーラーマニュアルを読み直すことが、安全と性能を両立させる近道なのです。

トルクレンチのおすすめ

・プレセットタイプ

・デジタルタイプ

よくある質問と専門家からのの答え(Q&A)

カーボンフレームのディスク台座なのですが、シマノのマニュアルが6–8 N·m、フレームの説明書が「Max 6 N·m」と書いてあります。どちらを優先すべきですか?

必ず「低い方」を優先してください。
シマノの6–8 N·mという数字は、キャリパーとボルト側の安全範囲を示したものです。

一方、フレームの「Max 6 N·m」は、そのフレームが耐えられるギリギリの上限値です。
フレームは一度割れてしまうと修理が難しく、交換となれば数十万円の出費になります。

「The Lower of the Two Rule(弱い方を守る)」を徹底し、5.5〜6 N·m程度を目安にトルクレンチで確実に管理しましょう。

トルクレンチを持っていません。どうしても「手ルク」で作業したいのですが、コツはありますか?

結論から言うと、安全を優先するならトルクレンチは必須です
ただし、どうしてもすぐには用意できない場合、以下のような「暫定的な目安」はあります。

  • ブリードスクリューのような0.5 N·m以下のボルト:指で当たるところまで回し、そこから1/8回転だけ
  • ブリードニップルやステムボルトのような4–6 N·m帯:手首のスナップだけで「クッ」と締める程度

とはいえ、これらはあくまで「手ルクと数値を結びつけるための練習用の感覚」です。

数千円のトルクレンチで、数十万円のフレームとあなた自身の身体を守れると考えれば、投資としては決して高くありません。

手ルクでの作業は、あくまでトルクレンチ購入までの“つなぎ”と捉えるのが現実的です

キャリパー固定ボルトにグリスを塗るのは、本当にダメですか?ショップでは塗っているように見えました。

重要なのは、「どのボルトに」「何の目的で」塗っているかです。

回転系のボルトや錆びやすい部分にグリスを塗るのは理にかなっていますが、ディスクブレーキのキャリパーを固定するボルトでは、潤滑によって軸力が増え、オーバートルクになるリスクが高まります。

プロショップで見かける「黒っぽい液体」は、グリスではなく中強度のねじ止め剤であることも多いです。

マニュアルに明確な指示がない場合は、

  • キャリパー固定ボルト:グリスではなくねじ止め剤を少量
  • ハンドル・シートポストなどのクランプ:指定があればグリスまたはカーボンペースト

といったように、部位と目的ごとに使い分けることをおすすめします。

シマノの指定トルクを守っているのに、走行中にだんだん音鳴りが出てきます。何が原因でしょうか?

トルクを守っているのに音鳴りが出る場合、原因は大きく3つに分けられます。

  1. センター出しの精度不足
    • 交互締めが不十分で、締め込み時にキャリパーがわずかにズレている。
  2. ローターやパッドの汚れ・偏摩耗
    • オイルやクリーナーが付着していたり、パッドが斜めに摩耗している。
  3. フレーム・フォーク側のたわみや共振
    • 軽量フレームでは、ある程度の微振動や共鳴は避けられないこともあります。

まずは、センター出しの手順をもう一度丁寧にやり直し、それでも改善しない場合はローター・パッドの状態を確認しましょう。

トルク管理がしっかりできていれば、「トルク以外のどこかに原因がある」と切り分けがしやすくなります。

まとめ:【未来】その「カチッ」でライドを変えよう

以上のように、シマノ製ディスクブレーキのトルク管理について、公式データと現場経験の両面から解説してきました。最後に、要点だけをもう一度整理します。

  1. 公式数値を守る。ただし「低い方を採用」が鉄則
    • キャリパー固定 6–8 N·m、センターロック 40 N·m は、あくまで部品側の値です。
    • フレームやハブ側の指定がそれより低ければ、必ずそちらを優先しましょう。

  2. トルクレンチは「贅沢品」ではなく「保険」
    • カーボンフレームと油圧ディスクの組み合わせが当たり前になった今、「手ルクだけで整備する時代」は終わりました。
    • 数千円の投資で、数十万円の機材とあなたの身体を守れるなら、その価値は十分にあります。
  3. ケミカルの使い分けで、締めすぎと緩みを同時に防ぐ
    • キャリパー固定ボルトにグリスは基本的にNG。
    • 中強度ねじ止め剤を正しく使い、摩擦係数と軸力をコントロールすることで、適正トルクの範囲で最大の安心を得られます。
  4. 「センター出し」と「トルク管理」はワンセットで考える
    • ピストンリセット → 隙間ゲージ → 交互締め → トルクレンチでの本締め。
    • この流れを一度体で覚えてしまえば、音鳴りトラブルに振り回されることはほとんどなくなります。

あなたの次のライドは、まだ「最適化」されていません。
この記事で学んだトルク管理の考え方と具体的な数値を、自分の手で一つひとつ試してみてください。

六角レンチを握ったときの、あの不安な感覚は、トルクレンチの「カチッ」という音に置き換えられる日が必ず来ます。その一歩を踏み出した瞬間から、あなたはもう「ただのユーザー」ではなく、自分の愛車を自分の手で守れるメカニックの側に立っているのです。


参考文献・引用先

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