- ロードバイクに「ギアオイル」という概念が存在しない理由と、本当に必要な潤滑剤の正体
- チェーンルブ3タイプ(ウェット・ドライ・ワックス)の特徴と、あなたの走行スタイルに合った選び方
- 汚れたチェーンが引き起こす「10ワット以上のパワーロス」の科学的根拠
- プロメカニックが実践する4フェーズ注油術の完全手順
- 5-56やWD-40をチェーンに使ってはいけない本当の理由と、正しい活用法
- 部位別・推奨ケミカル早見表でわかる「どこに何を塗るべきか」
はじめに
週末の朝。ベランダで愛車のチェーンを眺めながら、ふとこう思ったことはありませんか。
「変速がガチャッと重いし、なんだかペダルも渋い気がする。そういえば、車にはギアオイルを入れるよな……ロードバイクにも必要なのかな?」
あるいは、ホームセンターで見かけたCRC5-56の缶を手に取りながら、「これでいいんじゃない?」と考えたこともあるかもしれません。
結論から申し上げます。ロードバイクに「ギアオイル」という概念は存在しません。 必要なのは、自転車専用の「チェーンルブ」という別のケミカルです。
私は30年以上ロードバイクに乗り続け、数え切れないほどのチェーン交換とメンテナンスを行ってきました。その経験から断言できるのは、正しい潤滑剤の選択と注油方法を知っているかどうかで、あなたの走りは劇的に変わるということ。逆に、間違った方法でメンテナンスを続けると、10ワット以上のパワーロスを常に背負いながら走ることになります。
この記事では、「ギアオイル」という言葉に惑わされがちな初心者・中級者の方に向けて、本当に必要な潤滑の知識を、科学的データと実体験に基づいてお伝えします。読み終える頃には、「次の週末から何をすればいいか」が明確になっているはずです。
衝撃の真実|ロードバイクに「ギアオイル」は存在しない

自動車の常識をロードバイクに当てはめると、大切な愛車を痛めてしまう可能性があります。構造の違いを理解し、正しいケミカル選びの第一歩を踏み出しましょう。
自動車の常識がロードバイクに当てはまらない理由
「ギアにはギアオイル」。この発想は、車やオートバイの世界では正解です。しかし、ロードバイクではまったく事情が異なります。
自動車のトランスミッションを思い浮かべてください。金属製のギアが密閉されたケースの中で、高粘度のギアオイル(API GL-4やGL-5規格)に浸されながら回転しています。ギアオイルには硫黄やリン系の極圧添加剤が含まれ、高荷重・高温下でも油膜を維持できるよう設計されているのです。
一方、ロードバイクの駆動系はどうでしょう。
チェーン、スプロケット、チェーンリングはすべて外気にさらされた「開放系(オープンシステム)」で動いています。ギアボックスはありません。オイルを溜めておく場所もない。つまり、「ギアオイルを入れる場所」が物理的に存在しないのです。
ロードバイクで「ギア」と呼ばれるスプロケットやチェーンリングは、チェーンと噛み合って動力を伝える歯車のこと。
これらには直接オイルを塗る必要はありません。チェーンに適切なルブを塗布すれば、走行中にギアの歯に必要十分な油分が移行するからです。
開放系の敵は「研磨剤」の生成
密閉系と開放系の最大の違いは、「外部からの汚染」への対処法です。
自動車のギアボックスでは、砂やホコリが侵入する心配はほとんどありません。しかし、ロードバイクのチェーンは常に外気にさらされています。路面から巻き上がる砂、風で運ばれる微細な埃、雨水に含まれる不純物——これらがすべてチェーンに付着する可能性があるわけです。
ここで問題になるのが、オイルの「粘度」です。自動車用ギアオイルは非常に粘度が高く、その粘りが砂や埃を強力に吸着してしまいます。そして、砂とオイルが混ざり合うと何が起こるか。「研磨剤(グラインディングペースト)」が生成されるのです。
この黒いスラッジは、ペダルを漕ぐたびにチェーンの内部とスプロケットの歯を削り取っていきます。Zero Friction Cycling(ZFC)の研究によれば、汚染されたチェーンの摩耗速度は、清潔に保たれたチェーンの数倍に達することもあるそうです。
つまり、良かれと思って塗った高粘度のギアオイルが、実は愛車のパーツ寿命を縮める「静かな敵」になりかねないのです。
本当に必要なのは「チェーンルブ」という専用品
では、ロードバイクには何を使えばいいのでしょうか。答えは「自転車専用のチェーンルブ」です。
チェーンルブは、ロードバイク特有の「高面圧・低速摺動・開放環境」に最適化されて設計されています。一般的に、自動車用ギアオイルより粘度が低く、かつチェーン内部のピンとローラーの間に浸透しやすい配合になっています。
また、チェーンルブには大きく分けて3つのタイプがあります。
| タイプ | 特徴 | 向いている用途 |
| ウェットルブ | 高粘度・耐水性に優れる | 雨天走行、通勤、ロングライド |
| ドライルブ | 低粘度・サラサラ・汚れにくい | 晴天時、レース、ヒルクライム |
| ワックス系 | 最低摩擦・最高の清潔さ | 効率重視のシリアスライダー |
次章では、この3タイプの詳細と、あなたの走行スタイルに合った選び方を解説します。
効果の違いは体感レベル|チェーンルブ3タイプの選び方

チェーンルブは「どれでも同じ」ではありません。走行環境と目的に応じた選択が、快適な走りとパーツ寿命の延長につながります。
雨天・通勤派に最適な「ウェットルブ」
週末だけでなく、通勤や雨天でも自転車に乗る方には「ウェットルブ」が最適解です。
ウェットルブの最大の特徴は、その耐水性と持続性にあります。高粘度の合成油や鉱物油をベースとしており、塗布後も液体のままチェーンに残り続けます。長時間の雨天走行や、泥だらけの悪路を走るシクロクロスでも、油膜切れを起こしにくい設計になっているのです。
Finish Lineの技術資料によれば、ウェットタイプは「長距離ブルベや通勤ライダーに最適」とされています。
ただし、デメリットもあります。
粘度が高い分、砂や埃を吸着しやすい。こまめに清掃しないと、前述の「研磨剤」を形成しやすくなるのです。
継ぎ足し注油を続けるとヘドロ化することもあるため、定期的な完全洗浄が欠かせません。
晴天・レース志向なら「ドライルブ」
「チェーンを触っても手が黒くならない」——これがドライルブの魅力です。
ドライルブは、テフロン(PTFE)やセラミック粒子などの固形潤滑剤を、揮発性の高い溶剤に溶かした製品です。塗布して数時間経つと溶剤が蒸発し、乾いた潤滑被膜がチェーンに残ります。
この「サラサラ感」がもたらすメリットは大きい。表面がベタつかないため、砂や埃が付着しにくく、チェーンやスプロケットが黒く汚れにくいのです。
ドライルブは以下のようなシーンに向いています。
- 晴天時のロードレース
- 屋内トレーニング(Zwiftなど)
- 乾燥したオフロード
- 「チェーンを綺麗に保ちたい」というこだわり派
一方で、耐水性が低いという弱点があります。水たまりや小雨で容易に流出してしまうため、頻繁な再塗布が必要です。持続距離は製品によりますが、概ね150km〜300km程度と言われています。
プロも認める最高効率「ワックス系ルブ」
近年、プロチームでの採用が急増しているのが「ワックス系ルブ」です。
ワックス系には大きく分けて2種類あります。
- ホットメルトワックス: 固形のパラフィンワックスを鍋で溶かし、チェーンを「煮込んで」内部までワックスを浸透させる手法。手間はかかりますが、最高の潤滑性能と防汚性を誇ります。
- ドリップワックス: エマルジョン(乳液)状のワックスを塗布し、水分を蒸発させて固化させるタイプ。手軽にワックスの効果を得られます。
ワックス系の最大のメリットは、圧倒的な低摩擦抵抗と「触っても手が汚れない」ほどの清潔さです。汚れをほとんど吸着しないため、研磨剤が生成されにくく、チェーン寿命も延びやすい。
Zero Friction Cyclingの長期テストでは、適切に管理されたワックスチェーンが、オイルルブと比較して顕著に長い寿命を示したと報告されています。
デメリットは、導入ハードルの高さです。ホットメルト方式を採用する場合、完全な脱脂が必須で、古いオイルが残っているとワックスが定着しません。また、雨天時の耐久性はウェットルブに劣る場合があります。
どこに何を塗るべきか(推奨早見表)
「結局、どこに何を塗ればいいの?」という疑問に、一覧表でお答えします。
| 部位 | 注油の必要性 | 推奨ケミカル | 絶対NG |
| チェーン | 必須 | 自転車専用チェーンルブ | 自動車用ギアオイル、グリス |
| スプロケット | 不要 | なし(洗浄・乾燥のみ) | 直接の注油全般 |
| チェーンリング | 不要 | なし(洗浄・乾燥のみ) | 直接の注油全般 |
| ディレイラー可動部 | 推奨 | 浸透性チェーンルブ | グリス(砂が付着) |
| プーリー軸 | 必要 | 専用グリス(分解時) | 5-56等の低粘度溶剤 |
| ブレーキキャリパー | 要注意 | 少量の浸透潤滑剤 | スプレー噴射 |
重要ポイント: スプロケットやチェーンリングには直接オイルを塗らないでください。チェーンに塗布したルブが、走行中に自然と歯面に移行します。直接塗布すると、砂を吸着して研磨剤化するリスクが高まります。
10ワット以上の損失も|なぜチェーン潤滑がこれほど重要なのか

チェーン潤滑を怠ると、カーボンホイールへのアップグレード効果を帳消しにするほどのパワーロスが発生します。データで見る「汚れたチェーン」の恐ろしさを解説します。
データで見る「汚れたチェーン」のパワーロス
「チェーンの汚れくらい、大したことないでしょ」——そう思っている方に、衝撃のデータをお見せします。
Zero Friction Cycling(ZFC)やFriction Facts(現CeramicSpeed)の研究によれば、チェーンの状態によるパワー損失(250ワット出力時)は以下のように変化します。
- 理想的な状態(洗浄・最適注油済み): 摩擦損失 約6〜8ワット
- 雨天走行後(油膜劣化): 摩擦損失 約13ワット
- 泥・汚れが堆積した状態: 摩擦損失 18ワット以上
つまり、汚れたチェーンを放置するだけで、常に10ワット以上のハンデを背負って走っていることになるのです。
この10ワットという数字がどれほど大きいか、別の視点から考えてみましょう。
ロードバイクで10ワットを機材の軽量化や空力改善で得ようとすれば、数十万円の投資(ホイールやフレームの交換)が必要です。
それが、数百円〜数千円のケミカルと少しの手間で得られるのです。
チェーンメンテナンスは、最もコストパフォーマンスの高い「機材ドーピング」と言っても過言ではありません。
「チェーンの伸び」は摩耗である
「チェーンが伸びた」という表現を聞いたことがあるでしょう。しかし、物理的に金属プレートがゴムのように引き伸ばされるわけではありません。
真のメカニズムは「摩耗」です。
チェーンは、ピン・ローラー・プレートで構成されています。ペダルを漕ぐたびに、これらの部品がスプロケットの曲率に合わせて屈曲・伸展を繰り返します。
この際、ピンとローラーの接触面が少しずつ摩耗し、クリアランス(隙間)が拡大します。
この微小な隙間の総和が、チェーン全体の「伸び」として現れるのです。
Park Toolの技術資料によれば、チェーンの交換目安は以下の通りです。
- 11〜12速チェーン: 伸び率 0.5% で交換推奨
- 10速以下のチェーン: 伸び率 0.75% で交換推奨
チェーンチェッカーという専用工具を使えば、この伸び率を簡単に測定できます。「まだ使える」と思っていても、目に見えないレベルで摩耗は進行しているのです。
研磨剤と化した古いオイルがパーツを削る
チェーンの摩耗を加速させる最大の要因が、古いオイルと砂埃が混ざり合った黒いスラッジです。
このスラッジは、実質的な「液状ヤスリ」として機能します。走行するたびに、チェーンの内部とスプロケットの歯を削り取っていくのです。
さらに恐ろしいのは、チェーンのピッチ(間隔)が摩耗によって広がると、スプロケットの歯とピッチが合わなくなること。
すると、チェーンはスプロケットの歯の谷底に綺麗に収まらず、歯の側面を削りながら駆動するようになります。
これが「歯飛び」や、スプロケットの早期摩耗の原因です。
スプロケットは数万円する高価なパーツです。チェーン代(数千円)をケチってスプロケットを摩耗させるのは、経済的に大損失。
早めのチェーン交換と適切な潤滑管理が、結果的に最も安上がりなのです。
失敗しない注油術|プロが実践する4フェーズ完全手順

「塗るだけ」ではダメ。正しい手順を踏むことで、注油の効果が劇的に変わります。プロメカニックが実践する「洗浄→乾燥→注油→拭き取り」のサイクルを詳しく解説します。
フェーズ1: 点検と準備
注油する前に、まずチェーンの状態を確認しましょう。
- チェーンの摩耗チェック: チェーンチェッカー(Shimano TL-CN42等)で「伸び」を測定。伸び率が0.5%〜0.75%を超えていたら、いくら注油しても性能は回復しません。逆にスプロケットを削るだけなので、即座に交換してください。
- 変速位置の調整: フロントをアウター、リアをロー(大きいギア)から数段下げた位置に。チェーンにテンションがかかりすぎず、かつ作業しやすい状態にします。
フェーズ2: 洗浄
「汚れたチェーンにオイルを継ぎ足す」のは最悪の行為です。
古い汚れの上に新しいオイルを塗ると、研磨剤の生成を促進するだけ。必ず洗浄から始めてください。
- ディグリーザー塗布: チェーン専用クリーナーやディグリーザーをスプレー。チェーン洗浄機(通称「ガラガラ」)を使うと効率的です。
- ブラッシング: リンクの隙間に入り込んだ砂を掻き出すように、専用ブラシで擦ります。プーリーに堆積した汚れ(通称「プーリーの鼻くそ」)も、マイナスドライバーや爪楊枝で削ぎ落としましょう。
- 洗い流し・拭き取り: 水溶性ディグリーザーの場合は水で、溶剤系の場合はウエスで徹底的に汚れを除去。
- 乾燥: 水分は天敵です。エアコンプレッサーがあればベスト。なければウエスで拭き上げ、しばらく放置するか、水置換スプレー(ラスペネ等)をごく少量使用して水分を追い出します。
フェーズ3: 注油(Lubrication)
- ポイント塗布: チェーンルブの容器をよく振ります(成分を撹拌するため)。クランクを逆回転させながら、チェーンのコマ(リンク)一つ一つに、内側(ローラー部分)を狙って一滴ずつ垂らしていきます。
やってはいけないこと: ペダルを高速回転させながらスプレーを「シューッ」と吹きかける行為。これではブレーキやリムに飛散するだけで、肝心のリンク内部には届きません。 - 馴染ませる: 全周に塗布し終えたら、クランクを数回転させ、変速を全段行ってスプロケットやチェーンリングにもオイルを移行・馴染ませます。
- 浸透時間: 可能であれば、注油後数分から数時間(一晩置くのが理想)放置。オイルの溶剤成分が揮発し、潤滑成分が定着します。
フェーズ4: 拭き取り
この工程を省略する人が多いですが、実は最も重要なステップです。
- 表面オイルの除去: 清潔なウエスでチェーンを軽く握り、クランクを逆回転させて、チェーン表面のオイルを完全に拭き取ります。
- 確認: 指でチェーンを触ったとき、指先にうっすらと油分が移る程度が適量。ベタベタしている場合は拭き取り不足です。
なぜ拭き取りが重要なのか? チェーンの潤滑に必要なのは、ピンとローラーの「内部」に残った油分だけです。サイドプレートの外側に残ったオイルは、単に砂を吸着するだけ。「塗ったら拭く」をセットで覚えてください。
危険な間違い|「5-56」「WD-40」をチェーンに使ってはいけない理由

「KURE5-56でいいでしょ」は、半分正解で半分間違い。浸透潤滑剤の正しい役割と、ロードバイクでの適切な使い方を解説します。
KURE 5-56は「使える」が「最適ではない」
初心者からの質問で最も多いのが、「KURE 5-56は使えますか?」というものです。
呉工業の公式FAQ(https://www.kure.com/5-56series/faq/)では、以下のように回答されています。
「そんなことはありません、5-56は自転車のチェーンにもお使いいただけます。すでにグリース等が注油されている新しい自転車の場合は、チェーンの潤滑力が低下してきた際にお使いください。」
つまり、使用自体は問題ないのです。しかし、ロードバイクの駆動系に「最適か」と問われれば、答えはNoです。
KURE 5-56やWD-40などの浸透潤滑剤は、「浸透性」と「洗浄性」を優先して設計されています。揮発性が高く、サラサラとした液体が金属の隙間に入り込み、サビや汚れを浮かせる——これが本来の役割です。
一方で、荷重のかかるチェーンに必要な油膜強度(極圧性)を長期間維持する能力は高くありません。呉工業も「バイク(オートバイ)のチェーンには使えない」と明記しており、その理由として「5-56の潤滑被膜では耐えられない」としています。
ロードバイクのチェーンは、オートバイほど高速・高荷重ではありませんが、それでも専用品と比較すると持続性に劣るのは事実です。
5-56の正しい使い方:「水置換」
では、KURE 5-56やWD-40はロードバイクにまったく不要なのでしょうか。そうではありません。
正しい使い方は「水置換(みずちかん)」です。
雨天走行後、チェーンのリンク内部に水分が残っていると、錆の原因になります。KURE 5-56には水を追い出す「水置換性」があるため、以下の手順で活用できます。
- 洗車後、チェーンが濡れた状態で5-56を軽くスプレー
- 内部の水分を追い出す
- ウエスで完全に拭き取る
- 最後に自転車専用チェーンルブを塗布
この手順を踏めば、KURE 5-56の水置換効果を活かしつつ、専用ルブの持続的な潤滑効果を得られます。「5-56だけで済ませる」のではなく、「KURE 5-56+専用ルブのコンビネーション」と考えてください。
絶対にやってはいけないこと
KURE 5-56やWD-40を使う際、以下の点に注意してください。
- ブレーキ周辺への飛散: ディスクブレーキのローターやパッドに油分が付着すると、制動力が著しく低下します。最悪の場合、パッドの交換が必要になることも。
- ハブやBBへの大量噴射: KURE 5-56の強力な浸透力は、シールされたベアリング内部のグリスを溶かし出してしまう恐れがあります。グリス切れを起こすと、ベアリングの寿命が極端に縮まります。
- 「KURE5-56だけ」での長期運用: 揮発性が高いため、数十キロ走行すると潤滑効果が低下します。毎日注油するようなメンテナンスサイクルになってしまい、現実的ではありません。
Q&A|よくある疑問

- スプロケットに直接オイルを塗る必要はありますか?
いいえ、不要です。チェーンに塗布したルブが、走行中にスプロケットの歯に自然と移行します。直接塗布すると砂を吸着しやすくなり、研磨剤化するリスクが高まります。スプロケットは「洗浄→乾燥」のみで十分です。
- 雨の中を走った後のケアはどうすればいいですか?
即座の対応が必須です。帰宅後、チェーンが濡れたまま放置すると、一晩で錆が発生することもあります。以下の手順で対処してください。
- 室内トレーナー(Zwift等)だけで乗る場合も注油は必要ですか?
- 車体全体を水洗いし、泥を落とす
- 水分を拭き取り、チェーンに水置換スプレー(ラスペネ、5-56等)を吹き付けて内部の水を追い出す
- 拭き取った後、通常の手順でチェーンルブを塗布
- ディレイラーの可動部にはどんなオイルを塗ればいいですか?
浸透性の高いチェーンルブ(例:ワコーズ メンテルブ)を少量滴下し、はみ出た分を拭き取ってください。グリスは粘度が高く、露出部に塗ると砂が付着しやすくなるため避けましょう。Shimanoのディーラーマニュアルでも、ディレイラーの可動部(リンク)への注油が推奨されています。
- チェーンルブに「セラミック」と書いてあるのは何ですか?
窒化ホウ素(Boron Nitride)などのナノ粒子が含まれています。これらは非常に硬く、摩擦係数の低い微細な粒子で、金属表面の微細な凹凸を埋め、滑らかな潤滑被膜を形成する役割を果たします。高価ですが、耐久性と低摩擦性に優れています。
まとめ

ロードバイクに「ギアオイル」は必要ありません。必要なのは、自転車専用の「チェーンルブ」と、正しいメンテナンス習慣です。
この記事でお伝えした重要ポイントを整理します。
【1. 構造を理解する】 ロードバイクは「開放系」の駆動システム。自動車用ギアオイルは粘度が高すぎ、砂と混ざって研磨剤化するリスクがあります。
【2. 自分に合ったルブを選ぶ】
- 雨天・通勤派 → ウェットルブ
- 晴天・レース志向 → ドライルブ
- 効率最優先 → ワックス系
【3. 正しい手順を守る】 「洗浄→乾燥→注油→拭き取り」の4フェーズを徹底。特に「拭き取り」を忘れずに。
【4. 5-56は補助的に使う】 水置換や洗浄には有効ですが、主たる潤滑剤としては不向き。専用チェーンルブと組み合わせて使用してください。
汚れたチェーンを放置すると、10ワット以上のパワーロスとパーツ寿命の短縮という二重のペナルティを受けます。逆に言えば、正しいメンテナンスを行うだけで、数十万円の機材アップグレードに匹敵する効果が得られるのです。
次にあなたがやるべきこと
- 今すぐ: チェーンチェッカーで愛車のチェーン状態を確認
- 今週中: 走行スタイルに合ったチェーンルブを購入
- 次の休日: 4フェーズ注油術を実践
愛車のチェーンが「シャラシャラ」と軽やかに回る感覚は、一度味わうと忘れられません。次のライドで、その違いを体感してください。
参考文献・引用元リスト
- Zero Friction Cycling. (2025). Chain Testing. Retrieved from https://zerofrictioncycling.com.au/chaintesting/
- Velo. (2020, May 13). Lab testing confirms: Clean your damn chain. Retrieved from https://velo.outsideonline.com/road/road-racing/how-many-watts-does-a-dirty-chain-steal/
- 呉工業株式会社. (n.d.). 5-56の疑問や噂に答えます! Retrieved from
https://www.kure.com/5-56series/faq/ - Park Tool. (n.d.). When to Replace a Chain on a Bicycle. Retrieved from
https://www.parktool.com/en-us/blog/repair-help/when-to-replace-a-chain-on-a-bicycle - REI Co-op. (n.d.). How to Clean & Lube a Bike Chain. Retrieved from https://www.rei.com/learn/expert-advice/bike-chain.html
- Shimano. (n.d.). Dealer’s Manual – General Operations. Retrieved from https://si.shimano.com/en/pdfs/dm/GN0001/DM-GN0001-26-ENG.pdf
- SBAA(スポーツ自転車協会). (n.d.). ロードバイクのチェーンへの注油方法と注意すべきポイント. Retrieved from
https://www.sbaa-bicycle.com/article/1138 - Finish Line. (2015). Maintenance Guide. Retrieved from https://www.finishlineusa.com/files/FL_MAINT_GUIDE_2015_FIN_MED.pdf
- CeramicSpeed. (n.d.). Drivetrain Efficiency Test: Old vs. New. Retrieved from https://ceramicspeed.com/pages/drivetrain-efficiency-test-old-vs-new
- CYCLINGABOUT. (2025, October 6). How Much Does A Dirty Bicycle Chain Slow You Down? Retrieved from
https://www.cyclingabout.com/how-much-does-a-dirty-bicycle-chain-slow-you-down/
※本記事の価格およびスペック情報は2025年12月時点のものです。最新の在庫状況や価格については、各販売店の公式サイトまたは店頭でご確認ください。
※安全に関する注意:ロードバイクは車両です。道路交通法を遵守し、ヘルメット着用、適切な装備での走行を心がけてください。不安な場合は、必ずプロショップに相談してください。



