- 「クロモリ=重い」という固定観念が変わりつつある理由がわかる
- スピードだけじゃない、「軽量クロモリ」だけが持つ真の価値を理解できる
- 夢の9kg台を実現するための具体的なロードマップとリアルな費用感が掴める
- パナソニックやケルビムなど、国内外の代表的な軽量クロモリバイクの魅力に触れてみよう
- 購入後に後悔しないため、知っておくべきメリットとデメリットが明確になる

はじめに
ざらついたアスファルトの上を、まるでシルクのように滑っていく感覚。ふと跨るのをやめ、愛車に目を落とす。太陽の光を浴びて輝く、細身で優美なフレームライン。
「ああ、やっぱりコイツにして良かった」
そんな、心から満たされる瞬間を、あなたは体験したことがありますか?
もしあなたが今、「そろそろ、長く付き合える一生モノの自転車が欲しい」と考え、クロモリロードバイクの持つ独特の魅力に惹かれているなら。
そして同時に、「でも、クロモリは重いから坂道が…」という、最後の壁に突き当たっているのなら。この記事は、まさにそんなあなたのために書かれました。
単なるスペック比較では決して見えてこない「9kgのクロモリロードバイク」という選択肢の真価を、最新技術から具体的なモデル、そしてリアルな予算感まで、ここで徹底的に解き明かします。読み終える頃には、あなたの「2台目」選びの常識は覆され、生涯の相棒と出会うための確かな羅針盤を手にしているはずです。
【驚きの真実】「クロモリ=重い」は過去の話。9kg達成はなぜ可能なのか?

このセクションでは、「クロモリ=重い」という長年の常識が、現代の技術によっていかにして過去のものとなったのかを解説しましょう。
先進的な素材技術とパーツの進化が、9kgという目標を驚くほど現実的なものに変えました。
結論:先進技術とパーツ選択で「9kgの壁」は越えられるのです
まず、知ってほしい真実があります。現代において、クロモリロードバイクで9kgの壁を越えることは十分に可能でしょう。
これはもはや、懐古趣味のライダーだけが楽しむ乗り物ではなく、性能面でも十分に選択肢となり得ることを意味するのです。
この技術的到達点を実現させているのは、大きく分けて2つの要因に他なりません。
- フレーム素材(チューブ)そのものの劇的な進化
- フレーム以外のコンポーネントの飛躍的な軽量化
かつてのクロモリバイクが10kgを超えるのが当たり前だった時代とは、もはや前提条件が全く異なります。
現代の9kgクロモリロードバイクは、先進的な冶金技術と賢明なパーツ選択を組み合わせた、包括的なアプローチの結晶なのです。
鍵を握る「モダンクロモリチューブ」の世界:Reynolds, Columbus, Tangeの進化
軽量クロモリフレームの心臓部、それはフレームの骨格を成すチューブセットです。いわば、鋼の錬金術師たちが生み出した傑作と言えるでしょう。
イギリスのReynolds、イタリアのColumbus、そして日本のTangeといった伝説的なメーカーは、長年の研究開発により、鋼の限界を押し広げてきました。
その進化の鍵は、合金の改良や、チューブの肉厚を部位によって変化させる「バテッド加工」、そして強度を飛躍的に高める「熱処理」技術にあります。
例えば、Reynolds 853というチューブは「空気焼入れ」という特殊な性質を持ち、溶接後に冷える過程で継ぎ目の強度が自然に上がります。
これにより、ビルダーは軽さを保ちつつ、極めて頑丈なフレームを作り上げることが可能になりました。
また、Columbus Spiritはニオブ鋼をベースにしており、最薄部で0.38mmという驚異的な薄さを実現しています。
これらの技術革新が、ハイエンドなクロモリフレームに1.1kg〜1.9kgという、一昔前のアルミフレームに匹敵する軽さをもたらしたのです。
【比較表】ハイエンドスチールの特性:軽さと強度の裏にある「脆さ」は意図的な選択
高性能なチューブは、ただ軽いわけではありません。それぞれの素材が持つ物理的特性を理解することが、軽量クロモリの本質を知る上で重要になります。
チューブセット名 | 素材・合金 | 主要技術 | 引張強度 (UTS, MPa) | 最薄肉厚 (mm) | 主な特徴 |
Reynolds 853 | マンガンモリブデン鋼 | 空気焼入れ、熱処理 | 1250−1400 | 溶接後に強度が向上。高い剛性と耐久性を両立。 | |
Reynolds 953 | マルエージングステンレス鋼 | マルエージング処理 | >2000 | 0.3 | 極めて高い強度対重量比。耐食性に優れる。現在、新規供給は停止。 |
Columbus Spirit | OMNICROM (ニオブ鋼) | トリプルバテッド、冷間引抜 | 1300 | 0.38 | 卓越した弾性と疲労耐性。レーシングフレームに最適化。 |
Columbus XCr | 二相ステンレス鋼 | シームレス、冷間引抜 | 1250−1450 | 0.4 | 唯一のシームレスステンレスチューブ。高い耐食性と軽量性。 |
Tange Prestige | クロムモリブデン鋼 | 熱処理、ダブルバテッド | 0.4 | 軽量性、強度、乗り心地のバランスに優れた日本の伝説的チューブセット。 |
ここで注目すべきは、超高張力鋼が持つ「脆性」という特性。
これは、素材が大きく凹む前に破断に至る可能性を意味しますが、決して欠点ではないのです。ロードバイクの性能を最大化するため、あえて衝撃への耐性よりも極限の強度を優先した「意図的な選択」に他なりません。
この特性があるからこそ、チューブの壁を極限まで薄くでき、フレームの大幅な軽量化が可能となるのです。
カーボンフォークは当たり前?フレーム以外での軽量化がもたらす恩恵
フレーム単体だけでなく、システム全体で軽量化を考えるのが現代の常識です。とりわけ、フロントフォークをカーボン製にすることは、軽量化と乗り心地の向上に絶大な効果をもたらします。
今や多くの軽量クロモリバイクで標準的な選択肢となっています。
さらに、ホイール、コンポーネント、ハンドル、サドルといったあらゆるパーツが、この10年で飛躍的に進化しました。
かつてはプロ用の高級機材にしかなかった軽量パーツが、今では現実的な価格で手に入るようになったことも、9kg達成を後押しする大きな要因なのです。
スチールが持つ「Zing(澄んだ乗り心地)」とは何か?
スチールフレームの乗り心地は、しばしば「バネ感がある」「生き生きしている」と表現されます。
この独特の感覚は、素材が持つ固有の弾性が路面からの微振動を効果的に吸収し、ライダーに心地よいフィードバックとして伝わるために生まれるものでしょう。
これは、硬質で高周波の振動を伝えやすいアルミニウムや、振動を吸収しすぎて路面感覚が希薄になりがちな一部のカーボンフレームとは明らかに異なる感覚です。
この「Zing」とも呼ばれる澄んだ乗り心地こそ、多くのベテランライダーが最終的にスチールフレームへと回帰する理由の一つなのです。
なぜ最速のカーボンではなく「軽量クロモリ」なのか? 40代からの2台目選びの哲学

9kg台が実現可能だとしても、「同じ重量ならカーボンの方が速くて合理的では?」という疑問が浮かぶのは当然です。
このセクションでは、なぜ経験豊富なライダーが、あえて最速ではない「軽量クロモリ」を選ぶのか、その背景にある価値観と哲学を深掘りします。
重量計の数値では測れない3つの価値:乗り心地・美しさ・所有する喜び
7.5kgのカーボンバイクではなく、9kgのクロモリバイクを選ぶ理由。その答えは、単なる重量計の数値では測れない、豊かな価値の組み合わせにあります。
前述した「Zing」に代表される、路面と対話するような絶妙な乗り心地。長距離を走っても疲れにくいこの特性は、レースの勝敗よりもサイクリングそのものを楽しみたいライダーにとって、何物にも代えがたい価値を持つでしょう。
流行に左右されない、細身のチューブが織りなす普遍的なデザイン。ホリゾンタルフレームの機能美や、職人技が光るラグの造形は、まさに走る芸術品です。
精巧に作られたマシンを所有し、時に磨き上げ、自分好みにカスタムしていく楽しみ。それは、単なる移動手段ではなく、人生を豊かにするパートナーを持つことに似ています。
これらの要素が融合することで、純粋な重量対性能比を求める価値観とは異なる、より成熟したサイクリング体験が生まれるのです。
「一生モノのバイク」という思想:修理して乗り続けるクロモリの耐久性と永続性
クロモリを選ぶ行為は、しばしば「一生モノのバイク(Forever Bike)」を探す旅の一部と表現されます。実のところ、スチールはアルミニウムと比較して疲労寿命が長く、カーボンファイバーのように衝撃で致命的な損傷を受けるリスクが低いという、際立った耐久性を誇ります。
万が一、事故などでフレームが歪んでしまった場合でも、熟練したビルダーであれば修理が可能。これは、修復が困難な他の素材にはない大きなアドバンテージです。
数年ごとに最新モデルに買い替えるのではなく、一台のバイクと長く付き合い、共に物語を刻んでいく。この思想こそが、この市場を動かす原動力なのです。
【比較表】クロモリ・カーボン・アルミ・チタン、あなたに合う素材はどれ?
各素材の特性を比較することで、クロモリが持つ独自のポジションがより明確になります。
特性 | クロモリ(ハイエンド) | アルミニウム | カーボンファイバー | チタン |
フレーム重量 | 比較的軽量 (1.1kg – 1.9kg) | 軽量 | 超軽量 (1kg未満も可能) | 非常に軽量 (スチールより軽い) |
剛性対重量比 | 良好 | 非常に良好 | 卓越 | 良好 |
快適性・振動吸収性 | 非常に優れる (「しなり」がある) | やや劣る(硬い傾向) | 設計次第(減衰性が高い) | 非常に優れる (弾性がある) |
耐久性・疲労寿命 | 非常に優れる | 劣る(疲労限界が低い) | 衝撃に弱い可能性がある | 卓越 (「一生モノ」と言われる) |
修理の容易さ | 容易 | 困難 | 専門業者により可能 | 困難 |
一般的な価格帯 | 高価 | 安価~中価格 | 中価格~非常に高価 | 非常に高価 |
この表から、ハイエンドクロモリは、チタンに似た快適性と耐久性を持ちつつ、より修理が容易であるという、ユニークな特性を持っていることがわかります。
オーダーメイドという選択肢:自分だけの物語を刻むということ
CherubimやIndependent Fabricationのようなカスタムビルダーへの関心の高まりは、既製品では満たされない探求心の表れでしょう。
オーダーメイドでは、自分の身体や乗り方に完璧にフィットしたジオメトリはもちろん、パイプの種類、ラグの形、そしてカラーリングに至るまで、すべてを自分の理想通りに作り上げることが可能です。
フレームビルダーと対話を重ねながら作り上げた一台は、もはや単なる製品ではありません。それは、あなた自身の哲学や美意識が反映された、世界に一つだけの作品となるのです。
おしゃれなだけじゃない。カスタムで自分を表現する楽しみ
クロモリバイクのシンプルな構造は、カスタムやアップグレードの楽しみを広げてくれます。
購入時のパーツ構成に縛られることなく、ホイールやコンポーネント、サドルなどを交換しながら、少しずつ自分だけの一台に育てていくことが可能です。
性能を追求するカスタムもあれば、ヴィンテージパーツを組み合わせてクラシックな雰囲気を楽しむカスタムもあります。
その日の気分やライドの目的に合わせてパーツを交換する。そんな奥深い付き合い方ができるのも、クロモリバイクならではの魅力と言えるでしょう。
【実践ロードマップ】夢の9kg台を実現する具体的なレシピとオーダーメイド費用

さて、ここからは夢の9kg台を実現するための具体的なステップと、現実的な費用感について解説します。適切なパーツ選択と予算配分が、目標達成の鍵となります。
STEP1:心臓部を選ぶ。軽量フレームの鍵はパイプの選択から
全ての基本となるのがフレーム選びです。9kg台を目指すのであれば、前述したReynolds 853やColumbus Spiritといった熱処理が施された軽量チューブセットを使用したフレームが必須条件となります。
完成車で購入する場合は、メーカーが公表しているフレーム素材を必ず確認しましょう。
「クロモリ」とだけ表記されているエントリーモデルでは、9kg台の達成は困難です。フレームから組む「バラ完」の場合は、ビルダーやショップと相談し、自分の乗り方や予算に合った最適なパイプを選択することから始まります。
STEP2:最も効果的な投資。ホイール交換で走りは劇的に変わる
重量削減において、最も費用対効果の高い投資先がホイールです。特に、回転部分の外周部(リムやタイヤ)が軽くなることは、漕ぎ出しや加速、登坂性能に大きく影響し、数値以上に「走りが軽くなった」と体感できるでしょう。
多くの完成車に付属する「鉄下駄」と呼ばれる重いホイール(前後で1900g以上)から、1500gを切るような軽量アルミホイールやカーボンホイールに交換するだけで、バイクの性格は一変します。
9kg台を目指すなら、ホイールへの投資は避けて通れない道なのです。
STEP3:コンポーネントの現実的な選択肢。シマノ105とアルテグラの重量差と価格差
コンポーネント(変速機やブレーキなどの部品一式)も重量に大きく影響します。
例えば、シマノのコンポーネントで比較すると、人気の高い「105」グレードから、一つ上の「Ultegra」にアップグレードするだけで、約150gの軽量化が期待できます。
とはいえ、最上位グレードの「Dura-Ace」までいくと、軽量化の効果に対して価格が跳ね上がります。
性能、重量、価格のバランスを考えれば、Ultegraあたりが現実的で満足度の高い選択肢となるでしょう。
【シミュレーション】パナソニックFRCC14で組むと本当に9kgを切るのか?
では、具体的なパーツ構成で9kgを切ることが可能か、シミュレーションしてみましょう。
- 取得方法: 各メーカーの公称値や信頼できるレビューサイトの実測値を基に算出します。
- 計算式: フレーム重量 + グループセット重量 + ホイール重量 + タイヤ&チューブ重量 + その他パーツ重量 = 合計重量
- 結果:
- ベースフレーム: Panasonic FRCC14 (フレーム1,890g + フォーク650g) = 2,540g
- グループセット: Shimano 105 R7100一式 = 約2,800g
- ホイール: 軽量アルミクリンチャー = 1,500g
- タイヤ&チューブ: パフォーマンスタイヤ (250g x2) + 軽量チューブ (100g x2) = 700g
- フィニッシングキット (ハンドル、ステム、サドル等) = 約1,000g
- 推定合計重量 : 2,540 + 2,800 + 1,500 + 700 + 1,000 = 8,540g (8.54kg)
この計算から、信頼性の高いPanasonicのフレームとShimano 105という現実的なパーツ構成でも、9kgを大きく下回ることが可能だとわかります。
オーダーメイド費用のリアルな相場観は?予算50万円から100万円超まで
軽量クロモリバイクを手に入れる際の総費用は、選択するフレームやパーツによって大きく変動します。
- 予算50〜70万円:
パナソニックやアンカーといった国産ブランドのフレームに、シマノ105/アルテグラと軽量アルミホイールを組み合わせる、最も現実的でコストパフォーマンスに優れたプランです。 - 予算80〜120万円:
国内外のカスタムビルダーによるオーダーフレームに、アルテグラDi2やカーボンホイールを組み合わせる本格派プラン。性能はもちろん、所有する喜びを最大限に満たしてくれます。 - 予算120万円以上:
Independent FabricationやCinelli XCrといった最高級フレームに、トップグレードのコンポーネントを惜しみなく投入する究極のプラン。まさに一生モノの「スーパーバイク」が手に入ります。
結論として、軽量なクロモリバイクを組むという選択は、ハイエンドなパーツへの投資を伴います。
低予算で9kgを達成することはほぼ不可能であり、最終的な総コストはハイエンドのカーボンバイクに匹敵することを覚悟する必要があるでしょう。
【職人技の結晶】国内外の代表的な軽量クロモリロードバイク4選

このセクションでは、これまで解説してきた技術や哲学が、実際の製品としてどのように結実しているのか、国内外の代表的な4つのモデルを通して具体的にご紹介します。
Panasonic FRCC14:剛性と精度を追求した日本の優等生【完成車9.0kg】
日本のパナソニックが誇るオーダーシステム(POS)が生み出すFRCC14は、現代的な性能を追求したスチールバイクの優等生です。
粘りのあるカイセイ8630Rニッケルクロモリ鋼と軽量なカイセイ017を組み合わせ、特にヘッド周りの剛性を高めることで、伝統的なクロモリのイメージを覆すダイレクトで反応性の高い走りを実現しています。
- 使用チューブ: Kaisei 8630R & 017
- フレーム参考重量: 1,890g
- 完成車参考重量: 9.0kg(アルテグラ組)
- 参考価格: ¥292,000~ (フレームセット)
その乗り味は、しなやかさの中にも芯のある「レーサー」としての性格が際立っており、高性能な一台を求める純粋主義者にとって、素晴らしい選択肢となるでしょう。
Cherubim Racer:芸術性と走行性能が融合した「カーボンキラー」【完成車8kg台】
東京・町田に工房を構える今野真一氏が率いるケルビムは、日本のフレームビルディングにおける芸術性の頂点と言える存在です。その独創的で美しいフォルムは、国内外で数々の賞を受賞しています。
Racerモデルは、スチール特有のバネ感を活かしつつ、他の素材の硬質さとは無縁の鋭い加速感を持つと評されています。
静止重量以上に走行時の軽快感が際立ち、時には「カーボンキラー」とまで称されるほどのパフォーマンスを発揮します。
- 使用チューブ: オリジナルミックス
- フレーム参考重量: 約1,400g
- 完成車参考重量: 約8kg台
- 参考価格: 約¥400,000~ (フレームセット)
息をのむような芸術性とアグレッシブな走行性能を求めるライダーにとって、真のステートメントピースとなる一台です。
Cinelli XCr:ステンレスの輝き。イタリアの至宝
イタリアの老舗ブランド、チネリが誇る「スーパースチール」のアイコンがXCrです。
コロンバスXCrステンレススチールチューブを用い、イタリア国内でハンドメイドされるこのバイクは、クラシックな見た目を持つ現代のレースマシン。
ステンレスならではの輝きと優れた耐食性に加え、そのポテンシャルは驚異的です。
乗り心地は「ファンタスティック」と評され、非常に快適でありながら、チタンより軽量で、硬質なカーボンほど過酷ではないと絶賛されています。
ただし、超高額・特注ビルドであり、万人向けではないことが難点です。事実上特注や高額パーツ構成限定になることが必須です。実際に流通するXCr完成車は7.5kg以上が大半のようです。
- 使用チューブ: Columbus XCr
- フレーム参考重量: 1,650−1,700g
- 完成車参考重量: 7.5kg以上
- 参考価格: €13,000 (完成車例)
Independent Fabrication SSR:「崇高」と評される乗り心地の米国製フルカスタム【完成車8.28kg】
アメリカのカスタムフレーム製造の頂点に君臨するのが、Independent Fabrication (IF)です。SSR (Stainless Steel Road)は、Reynolds 953またはColumbus XCrチューブを使用し、ライダー一人ひとりのために完全なカスタムジオメトリで製作されます。
レビューでは、その乗り心地が「sublime(崇高)」という言葉で称賛されており、スチールのバネ感とチタンに近いキャラクターを併せ持つとされています。
工芸品と評されるほどの美しい溶接品質もIFの真骨頂。あるユーザーは、ペダル込みの完成車重量が8.28kgであったと報告されています。
- 使用チューブ: Reynolds 953 / Columbus XCr
- フレーム参考重量: 1.1kg
- 完成車参考重量: 8.28kg (実測例)
- 参考価格: $4,600~ (フレームセット)
コストを度外視してでも究極の一台を求めるなら、これ以上の選択肢はないかもしれません。
【Q&A】購入前の不安を解消!軽量クロモリ
ここでは、軽量クロモリロードバイクを検討する際に、多くの方が抱くであろう疑問にお答えします。
- 登坂性能は、やっぱりカーボンバイクに劣りますか?
はい、ゼロからの加速やプロレベルのアタックのような、瞬発的な反応性においては、同重量の最新カーボンバイクに一歩譲ります。
しかし、9kg前後の重量であれば、適切なギア比選択とクロモリ特有の「バネ感」を活かしたリズミカルなペダリングで、心地よく坂を上ることが可能です。
レースでのコンマ1秒を争うのでなければ、多くのアマチュアライダーにとって十分すぎる登坂性能を持っています。
- TIG溶接とラグフレーム、軽量化にはどちらが有利ですか?
一般的には、パイプ同士を直接溶接する「TIG溶接」の方が、継手部品である「ラグ」を使わないため、軽量に仕上がります。(数十g~100g程度)
一方で、「ラグフレーム」には職人技が光る独特の造形美があり、乗り心地を微調整する役割も担っています。
軽量性を最優先するならTIG溶接、デザイン性や特定の乗り味を求めるならラグフレーム、というように、何を重視するかで選ぶのが良いでしょう。
- メンテナンスで特に気をつけることはありますか?
スチールである以上、最も注意すべきは「錆」です。特に雨天走行後や湿度の高い場所に保管する際は注意が必要でしょう。
乗車後は水分をしっかり拭き取り、室内で保管することを基本としましょう。また、フレーム内部の見えない部分を錆から守るため、年に一度は専門店で防錆処理を施すことをお勧めします。
- 東京近郊でおすすめのクロモリ専門店はありますか?
はい、東京には世界レベルのカスタムバイクを扱う専門店が複数存在します。
例えば、この記事で紹介したIndependent FabricationやCherubimといったハイエンドブランドを専門に扱うショップがあります。
こうした専門店では、豊富な知識を持つプロフェッショナルから、フレーム選びからパーツ構成まで、詳細なアドバイスを受けられます。
まずは下記のプロショップなどに相談してみるのが、理想の一台への近道です。
BLUE LUG KAMIUMA 住所:東京都世田谷区上馬2-38-5 電話:03-6805-3400
ビンテージバイクショップ コルサコルサ 住所:東京都目黒区五本木2-14-10 電話:03-6914-7070
まとめ:9kgのクロモリは、人生を豊かにする「一生モノ」のパートナー

この記事を通じて、現代の「9kgのクロモリロードバイク」が、単なるノスタルジーではなく、先進技術と熟練の職人技、そして明確な哲学の上に成り立つ、非常に魅力的で現実的な選択肢であることがお分かりいただけたかと思います。
この旅は、単にグラム単位で重量を削ること以上の意味を持つのです。それは、性能が単に重量計の数値だけでなく、乗り心地の質、マシンの寿命、そして所有する誇りによって測られる、特定のロードバイクの理想を追求する行為に他なりません。
純粋な速さだけを求めるステージを卒業し、自身のマシンとのより深い結びつきを求める、情熱的で経験豊富なライダー。
もしあなたがそうであるならば、軽量クロモリロードバイクは、あなたの期待に応えるだけでなく、これからの自転車人生を生涯にわたって豊かにしてくれる、最高のパートナーとなるでしょう。
この記事で得た知識を羅針盤に、ぜひ一度、信頼できるプロショップの扉を叩いてみてください。そこには、あなたの価値観を揺さぶり、未来の相棒となる運命の一台が待っているはずです。
参考文献・引用元リスト
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Independent Fabrication. (n.d.). SSR. Independent Fabrication.
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http://mrt-23.blogspot.com/2013/11/independent-fabrication-ssr-100km.html
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永平 宏行. (n.d.). 【ヒルクラ10%】目指せ、パーソナルベスト!【⑥番外編・機材】. Y’s Road.
https://ysroad.co.jp/md/2017/06/12/6230