- なぜ今、プロの世界でも「太いタイヤ」が選ばれ始めているのか?
- 【データで見る】28cと32cで「巡航速度」と「登坂タイム」は具体的にどう変わるか?
- 【最重要】あなたのバイクに32cが入るか?たった1分でできる「タイヤクリアランス確認法」
- 交換して後悔しないために知るべき「意外なコスト」と「リムとの相性」のすべて
- あなたの走りを変える、最適な32cタイヤの選び方と最新おすすめモデル
はじめに
「今の28cタイヤ、別に悪くない。でもね…」
ロングライドの後半、いつも脚が売り切れる。景色の良い脇道を見つけても、路面状態が怖くて進めない。そんなモヤモヤ、ありませんか?
解決策として注目される「32cタイヤ」。ところが調べれば調べるほど、「走りが重くなる」「後悔した」といった声も目に入る。本当のところ、どうなんだろう。
この記事では、独立機関のテストデータや物理原則に基づき、28cと32cの性能差を徹底解剖します。個人的な感想ではなく、科学的根拠。それがあなたの最適な選択をナビゲートしてくれるはずです。
週末の100km、もっと楽に、もっと遠くへ。その答えが、ここにあります。
「細いタイヤが速い」は過去の常識?ロードバイクタイヤ最新トレンドの背景

このセクションでは、なぜロードバイクのタイヤが太い方向へとシフトしているのか、その技術的な背景と科学的な根拠を解き明かします。
なぜプロも採用?23c→25c→28cへとタイヤが太くなった歴史的背景
ほんの数年前まで、ロードバイクのタイヤは700×23cが絶対的な標準でした。速さ=細さ。それが常識だったんです。
しかし風向きが変わります。プロレースの世界が25cを採用し始め、今や28cが主流に。このパラダイムシフトは、単なる流行じゃない。技術の進歩と、走行性能に関する科学的理解が深まった結果なんです。
かつてツーリング用とされた28cや32c。それが今、パフォーマンスを語る上で中心的な存在となりました。この進化の歴史を理解することこそ、最適なタイヤ選びの第一歩となります。
32c化を後押しした2つの技術革新「ディスクブレーキ」と「ワイドリム」
タイヤのワイド化を加速させたのは、主に二つの技術革新です。
①ディスクブレーキの普及
従来のリムブレーキでは、キャリパー自体が装着できるタイヤの太さを物理的に制限していました。ディスクブレーキはこの制約を完全に取り払い、フレーム設計者により広いタイヤクリアランスを確保する自由をもたらしたのです。
②ホイールの「ワイドリム化」
タイヤとリムを一つのシステムとして捉え、太いタイヤの性能を最大限に引き出すためには、それを支えるリムもまた幅広であるべき。そんな認識が定着しました。
これら二つの技術は相互に影響を与え合いながら進化し、ロードバイクの性能を新たな次元へと引き上げたわけです。
科学が覆した神話:「転がり抵抗」の本当のメカニズムとは?
「細いタイヤは転がり抵抗が少なく速い」という神話。近年の研究で、これが完全に覆されました。
転がり抵抗の主な原因は路面との摩擦ではなく、荷重によってタイヤが変形し、元に戻る際に失われるエネルギー。これを「ケーシングヒステリシス」と呼びます。
このメカニズムの鍵は、タイヤの接地面(コンタクトパッチ)の形状です。
細いタイヤ(高圧)
前後方向に長く、幅の狭いコンタクトパッチを形成。これによりタイヤの変形が大きくなり、エネルギー損失が増加します。
太いタイヤ(適正圧)
より円形に近い、短く幅の広いコンタクトパッチを形成。これにより進行方向への変形が減少し、結果として転がり抵抗が低減されるのです。
この理論は、独立テスト機関「Bicycle Rolling Resistance (BRR)」のデータによっても裏付けられています。
同機関のテストでは、各サイズのタイヤを「同じ快適性レベル」の空気圧に調整した場合、23mmから32mmまでの転がり抵抗はほぼ同一になることが示されています。
つまり、太いタイヤを低い空気圧で運用することで、細いタイヤと同等以上の転がり効率を達成できるということ。これは大きな発見でした。
現実世界の路面で重要になる「サスペンション損失」という考え方
実験室の滑らかなドラム上でのテストと、私たちが実際に走る路面。そこには大きな違いがあります。現実のアスファルトは、目に見えない無数の凹凸で満ちている。
ここで重要になるのが「サスペンション損失」という概念です。
細く高圧なタイヤは、路面の微細な凹凸でバイクとライダー全体を上下に振動させます。この上下動に費やされるエネルギーがサスペンション損失であり、データには現れないものの無視できないエネルギーロスとなるんです。
対照的に、32cのような太いタイヤは低い空気圧で運用することで、路面からの微振動を効果的に吸収します。これによりタイヤが路面を跳ねることなく追従し続けるため、エネルギーロスが減少するメカニズムです。
つまり、ワイドタイヤがもたらす「滑らかな乗り心地」は、単に快適なだけでなく、現実の路上でライダーのエネルギーを節約し、効率的な推進力に変換するための重要な要素なのです。
【データで決着】ロードバイク 32cと28c、走行性能を5つの指標で徹底比較

このセクションでは、独立機関のデータや物理原則に基づき、32cと28cの性能差を5つの具体的な指標で比較し、あなたの走りがどう変わるのかを明らかにします。
快適性/疲労度: 100km超のロングライドで差がつくエアボリュームの恩恵
32cタイヤが28cに対して持つ最も明白な利点。それは、圧倒的なエアボリューム(空気量)にあります。
この大きな空気の容量が、まるで高性能なサスペンションのように機能し、路面からの高周波振動を吸収・減衰させる。特に100kmを超えるようなロングライドにおいて、この差は顕著に現れます。
路面から伝わる絶え間ない振動は、ライダーの手、腕、首、背中に微細な筋疲労を蓄積させる。32cタイヤによる振動減衰は、この生理的負担を大幅に軽減し、ライド後半のパフォーマンス維持を可能にします。
長距離においては、「快適性」がすなわち「速さ」へと直結するのです。
スピード: 「転がり抵抗」と「空気抵抗」のトレードオフ。速度は本当に落ちるのか?
ワイドタイヤ化で最も懸念されるのがスピードの低下、特に空気抵抗の増加です。
タイヤ幅が広がれば、前面投影面積が増え、空気抵抗が増大する。これは物理的な原則です。
しかし、現代のエアロダイナミクスでは、タイヤはリムとの相互作用で評価されます。
ここで重要になるのが「ルール・オブ・105」という指針。
これは、最適な気流を維持するため、リムの外幅がタイヤの実測幅の少なくとも105%であるべき、というもの。
つまり、最新のワイドリムと組み合わせれば、空気抵抗のペナルティは最小限に抑えられるわけです。
【速度差の結論】
- 転がり抵抗
実世界の荒れた路面では32cが有利 - 空気抵抗
空気抵抗の影響は速度の二乗で増大するため、多くのライダーが高速巡航と感じる30km/hを超えるような速度域では、前面投影面積の小さい28cが有利
多くのホビーライダーが走行する速度域では、空気抵抗の差よりも、転がり抵抗の低減とサスペンション損失の抑制によるメリットが上回ることが多いと言えます。
グリップ性能: 雨の日の安心感が違う!コーナリングとブレーキングへの影響
32cタイヤの大きなエアボリュームと低圧運用は、グリップ性能にも絶大な効果をもたらします。
32cはより低い空気圧で運用できるため、タイヤが硬く跳ねずに路面を包み込むようにしなやかに変形します。その結果、接地面積(コンタクトパッチ)の形状が最適化され、純粋な機械的グリップが向上するのです。
この効果は、特にウェットコンディションや荒れた路面でのコーナリングで顕著に体感できます。ライダーはタイヤが滑る感覚が減り、バイクを倒し込む際の安定性と安心感が格段に高まるのを感じるでしょう。
また、グリップ力の向上はブレーキング性能にも直結し、より短い距離で安全に停止することを可能にします。
重量と加速: ヒルクライムで響く「回転質量」というデメリット
一方、ワイドタイヤ化の明確なデメリット。それは重量の増加です。
同モデルで比較した場合、28cから32cへの変更は、タイヤ1本あたり30gから50g程度の重量増を意味します。
表:Continental GP5000 S TR の公称重量比較
サイズ | 公称重量 |
700x28c | 280g |
700x32c | 330g |
絶対的な重量差は小さいものの、これはホイール外周部の「回転質量」の増加である点が重要になります。
なぜなら回転する物体は、静止している物体よりも加速させるためにより多くのエネルギーを必要とするからです。
このペナルティが最も感じられるのは、ゼロからの加速やスプリント、そしてヒルクライムなどの場合です。
頻繁な加減速が求められるクリテリウムや、登坂性能を最優先するクライマーにとって、この差は無視できない要素となるでしょう。
見た目の変化: 愛車の印象はどう変わる?装着ビフォーアフター写真集
性能とは別に、見た目の変化も重要な要素です。
タイヤを太くすると、ロードバイクの持つシャープで軽快な印象から、よりマッシブで安定感のあるルックスへと変化します。
28c装着時
レーシーで引き締まった足回り。多くのエンデュランスロードでバランスの取れた標準的な見た目。
32c装着時
タイヤの存在感が増し、どっしりとした迫力が生まれる。「オールロード」やグラベルバイクに近い雰囲気。
これは完全に好みが分かれる点です。
細身のクラシカルなクロモリフレームなどに32cを装着すると、タイヤのボリューム感が際立ち、全体のシルエットがクラシックな軽快さから、より安定感のあるツーリングバイクのような印象に変化します。
逆に、ボリュームのあるエアロフレームやエンデュランスロードには、32cの力強さがマッチすることもあります。
購入前にInstagramなどで「#roadbike32c」と検索し、ご自身のバイクに近いモデルの装着イメージを確認することをお勧めします。
後悔しない!32cタイヤ交換を成功させる実践ガイド

32cタイヤのメリットを理解しても、いくつかの「関門」をクリアしなければ後悔に繋がる可能性があります。このセクションでは、交換を成功させるための具体的な手順と注意点を解説します。
【最重要】たった1分!愛車に入るか確認するタイヤクリアランス測定法
32c化における最大の関門が「タイヤクリアランス」、つまりタイヤとフレーム(またはフォーク)との隙間です。
これが不足していると、走行中にタイヤが接触し、重大な事故につながる危険があります。
【クリアランス確認手順】
- 測定箇所の特定: 現在装着している28cタイヤの状態で、タイヤとフレームが最も接近している3箇所を探します。
- ① フロントフォークの肩(アーチの内側)
- ② チェーンステー(BBに近い部分)
- ③ シートステー(ブレーキブリッジ周辺)
- 隙間の測定: その隙間に4mmの六角レンチを差し込んでみてください。
- 判定:
- OK: 六角レンチが余裕で入る場合、32cを装着できる可能性が高いです。
- NG: ギリギリ、または入らない場合は、残念ながら32c化は困難です。
注意: 安全のため、タイヤとフレームの間には最低でも3〜4mm程度の隙間を確保することが推奨されます。
知らないと損する「実効幅の罠」とリム内幅との重要な関係
タイヤに表記されている「32c」という公称幅は、絶対的な数値ではありません。
実際にホイールに装着し、空気を入れた後の「実効幅」は、組み合わせるリムの内側の幅(リム内幅)によって大きく変化します。
ナローリム(旧式)
タイヤ断面が不安定な「電球」形状になり、コーナリングで「ヨレ」を感じやすくなります。
ワイドリム(現代)
タイヤ断面が理想的な「U字型」になり、サイドウォールが安定し、設計通りの性能を発揮できます。
ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機構)のガイドラインでは、32cタイヤには内幅21mmから25mmのリムが最適とされています。
ワイドなリムはタイヤを広く引き伸ばすため、公称28cのタイヤが実測30mm以上に、公称32cが34mm以上に達することも珍しくありません。
この「実効幅の罠」を考慮せずにタイヤを選ぶと、せっかく購入したのにクリアランスが足りない、という事態に陥る可能性があります。
最新トレンド「フックレスリム」に乗っている場合の注意点
近年、ハイエンドのカーボンホイール市場で「フックレスリム」が急速に普及しています。
これは、タイヤのビードを引っ掛ける「フック」部分がない設計で、軽量化や強度向上といったメリットがあります。
しかし、フックレスリムには対応する専用のタイヤ(チューブレス)を使用する必要があります。
非対応のタイヤを使用すると、走行中にタイヤが外れる危険があるため、メーカーの互換性リストを必ず確認してください。
Continental GP5000 S TRなど主要な最新タイヤはフックレスに対応していますが、購入前に必ずパッケージや公式サイトで「Hookless Compatible」の表記を確認しましょう。
チューブレス化は必要?メリット・デメリットと導入コストの目安
現代のワイドタイヤの性能を最大限に引き出すなら、チューブレス化は非常に有効な選択肢です。
メリット
- 乗り心地の向上(より低い空気圧で運用可能)
- 転がり抵抗の低減
- 耐パンク性能の向上(小さな穴はシーラント剤が塞ぐ)
デメリット
- 導入コストが高い(対応タイヤ、リム、バルブ、シーラントが必要)
- セットアップやメンテナンスに手間がかかる
導入には、タイヤ代とは別に合計で1.5万円〜2万円程度の追加出費が見込まれます。
(内訳例:チューブレス対応リムテープ 約3,000円、専用バルブ 約3,000円、シーラント液 約2,000円、ショップでの作業工賃 1本3,000円~)
最高の乗り心地を求めるなら挑戦する価値はありますが、まずはチューブを入れて運用し、後からチューブレス化することも可能です。
タイヤだけじゃない!交換に必要な工具とショップに頼む場合の工賃相場
ご自身でタイヤ交換を行う場合、最低限以下の工具が必要です。
- タイヤレバー(3本)
- フロアポンプ(空気圧計付き)
チューブレス化する場合は、さらにシーラント液やバルブコアツールなどが必要になります。
もし作業に自信がない場合は、専門ショップに依頼するのが安心です。
- タイヤ・チューブ交換工賃の目安:
1本あたり1,500円〜3,000円程度 - チューブレスセットアップ工賃の目安:
1本あたり3,000円〜5,000円程度
※料金は店舗や作業内容によって異なります。
あなたに最適な一本が見つかる!タイヤの選び方と最新おすすめモデル

ここまでの分析を踏まえ、あなたのライディングスタイルに最適なタイヤを選ぶための具体的な指針と、市場をリードする最新のおすすめモデルを紹介します。
まずは目的を明確に!ライディングスタイル別・最適解チャート
あなたにとって最適なタイヤは、あなたが「何を最も重視するか」によって決まります。
以下のチャートでご自身のタイプを確認してみましょう。
あなたのタイプ | 最優先事項 | 最適な選択肢 |
A: 競技志向レーサー | 空力、軽量性、反応速度 | 28c |
B: 長距離ライダー | 快適性、疲労軽減、安定性 | 32c |
C: 全天候型ライダー | 耐久性、耐パンク性、グリップ | 32c |
D: 「ロードプラス」アドベンチャー思考 | 汎用性、悪路走破性 | 32c |
【2025年版スペック比較】主要4大メーカー人気モデルの特徴
高性能タイヤ市場は、数社の主要メーカーによって牽引されています。
ここでは、各社のフラッグシップモデルにおける28cと32cのスペックを比較します。
表:主要フラッグシップタイヤ 28c vs 32c スペック比較
メーカー | モデル | サイズ | 公称重量(g) | TPI | 主要技術 | フックレス互換 |
Continental | GP5000 S TR | 28c | 280 | 2/220 | BlackChili | 対応 |
Continental | GP5000 S TR | 32c | 330 | 2/220 | BlackChili | 対応 |
Vittoria | Corsa Pro TLR | 28c | 295 | 320 | Graphene+Silica | 対応 |
Vittoria | Corsa Pro TLR | 32c | 320 | 320 | Graphene+Silica | 対応 |
Schwalbe | Pro One TLE | 28c | 295 | 127 | ADDIX Race | 対応 |
Schwalbe | Pro One TLE | 32c | 345 | 127 | ADDIX Race | 対応 |
Michelin | Power Cup TLR | 28c | 285 | 4×120 | GUM-X | 対応 |
Michelin | Power Cup TLR | 32c | 330 | 4×120 | GUM-X | 対応 |
王者 Continental GP5000 S TR 32c はどんなライダーにおすすめ?
「GP5000 S TR」は、転がり抵抗、グリップ、耐久性の全てを高次元でバランスさせた、まさに「王道」のタイヤです。
32cモデルは、その優れた基本性能はそのままに、圧倒的な快適性と安定性をプラス。
週末のロングライドから、多少荒れた舗装路までを不安なくこなしたいエンデュランスライダーにとって、これ以上ない選択肢と言えるでしょう。
特に、乗り心地の改善を最優先しつつも、ロードバイクらしい軽快さを損ないたくない、という欲張りな要求に見事に応えてくれます。
【インプレション】国産の雄 Panaracer「Agilest」「GravelKing」32cの実力
日本のライダーにとって馴染み深いパナレーサーも、素晴らしい選択肢を提供しています。
Agilest (アジリスト) 32c
レースタイヤ由来の軽快な走りを持ちながら、ワイド化によって快適性を両立させたモデル。しなやかな乗り心地と低い転がり抵抗が魅力で、舗装路メインの軽快なツーリングに最適です。
GravelKing (グラベルキング) 30c
「ロードプラス」の冒険を始めるなら、このタイヤは外せません。
舗装路でのスムーズな走行感を維持しつつ、サイドに配置されたノブが未舗装路で安定したグリップを発揮。
いつものサイクリングロードから、勇気を出して林道へ踏み込むことを可能にしてくれる一本です。
エンデュランスロードとの最高のマッチングを探る
TREK「Domane」、SPECIALIZED「Roubaix」、CANNONDALE「Synapse」といった最新のエンデュランスロード。
その多くが32c、あるいはそれ以上のタイヤクリアランスを確保して設計されています。
これらのバイクが持つ振動吸収機構と32cタイヤの快適性が組み合わさることで、まさに「魔法の絨毯」のような乗り心地が実現します。
バイクのポテンシャルを最大限に引き出し、ロングライドでの疲労を最小限に抑えたいなら、32cタイヤへのアップグレードは最も効果的なカスタムの一つです。
よくある質問 Q&A

ここでは、32cタイヤへの交換を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
- 32cにすると輪行は大変になりますか?輪行袋への影響は?
空気を完全に抜けば、ほとんどの輪行袋に問題なく収納可能です。ただし、タイヤが太くなる分、ホイールをフレームに固定する際に、チェーンステーなどに干渉しやすくなる場合があります。また、空気を入れる際には携帯ポンプでの作業が少し大変になるため、CO2インフレーターを携行すると安心です。
- 体重70kgですが、最適な空気圧はどうやって見つけたらいいですか?
A2: 最適な空気圧は、タイヤ、リム幅、路面状況によって変わるため一概には言えませんが、出発点として以下の表を参考にしてください。
体重70kgの場合、32cであれば55-65 PSI (3.8-4.5 Bar)あたりから始め、乗り心地や走行感を確認しながら0.2 Bar (約3 PSI)ずつ調整していくのがおすすめです。
総重量 (ライダー+バイク) 700x28c 推奨空気圧 (PSI / Bar) 700x32c 推奨空気圧 (PSI / Bar) 70 kg 70-80 PSI / 4.8-5.5 Bar 55-65 PSI / 3.8-4.5 Bar
- フロント28c、リア32cという組み合わせ(非対称セットアップ)はアリですか?
はい、非常に合理的な選択肢です。バイクの最前部に位置するフロントタイヤで空力性能に優れる28cを、体重の多くがかかり快適性と転がり効率が重要なリアに32cを採用するアプローチです。特にタイムトライアルやトライアスロンの選手が採用する戦略ですが、平坦基調の高速ロングライドなどでも有効です。
- カーボンロードですが、クリアランス以外に注意点はありますか?
最新のカーボンロード、特にエンデュランスモデルはワイドタイヤを前提に設計されていることが多いですが、レース志向のエアロロードなどはクリアランスが非常にシビアな場合があります。また、前述の「フックレスリム」はカーボンホイールに多いため、お使いのホイールがフックレスかどうかの確認は特に重要です。
まとめ:あなたのライドを進化させる、後悔しないタイヤ選び

これまでの詳細な分析を踏まえ、あなたのための最終的な結論と、各タイヤサイズ性能指標をまとめました。
【最終結論】意思決定マトリクスで28cと32cの適性を再確認
一目でわかるように、各性能指標を5段階で評価しました。
あなたの優先順位と照らし合わせ、最終的な判断の参考にしてください。
表:28c vs 32c 意思決定マトリクス
性能指標 | 700x28c | 700x32c | より良い選択となるライダー/シーン |
スピード(滑らかな路面) | ★★★★★ | ★★★★☆ | 競技レース、タイムトライアル |
スピード(荒れた路面) | ★★★☆☆ | ★★★★★ | 実世界でのエンデュランスライド |
空力性能 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | エアロ最適化ホイール使用時 |
快適性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | 長距離、エンデュランス |
グリップ&コーナリング | ★★★★☆ | ★★★★★ | 全天候型、テクニカルな下り |
重量&加速性能 | ★★★★★ | ★★★☆☆ | クライミング、クリテリウム |
汎用性(オールロード) | ★★★☆☆ | ★★★★★ | 混合路面の探求 |
耐久性 | ★★★★☆ | ★★★★★ | 通勤、高走行距離トレーニング |
結論として、700×28cは現代ロードレースにおけるオールラウンド性能の頂点であり、700×32cはエンデュランス、快適性、そして走破能力の境界線を再定義した存在と言えます。
次のタイヤ購入のための最終チェックリスト
あなたの意思決定をガイドする最終チェックリストです。
- [ ] 制約の測定: あなたのフレームの最大タイヤクリアランスは?リムの内幅は?リムはフックレスか?
- [ ] 主目的の定義: あなたが最優先したいのは、レースでのスピードか、日々の快適性と汎用性か?
- [ ] 地形の評価: あなたが主に走るのは滑らかな舗装路か、荒れた路面か?
- [ ] システムの評価: リム幅を考慮したタイヤの「実効幅」はフレームに収まるか?
業界のトレンドがワイド化へと向かっていることは間違いありません。しかし、最適な選択は普遍的なものではなく、ライダー、路面、そして機材という三者の相互作用によって決まる、極めて個人的なものです。
このレポートが提供したデータを基に、あなた自身のライディングに最適な一本を見つけ出すことこそが、真の最適解へと至る唯一の道となるでしょう。
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